一般歯科―その2
歯牙移植ってなあに?

歯牙移植とは、不要な歯を抜いて違うところへ移植することで、自家歯牙移植と他家歯牙移植があります。他家歯牙移植は他人の歯を移植するため、免疫学的に問題があることと、治癒形態が骨癒着(アンキローシス)になるのでお勧めできません。

自家歯牙移植は、自分自身の役に立ってない歯を抜いて違うところへ移植する方法で、免疫学的に問題がなく、治癒形態がほとんど歯根膜付着といって普通の歯と同じように機能するのでお勧めできます。(抜歯後、保存して後に移植する場合は骨癒着になります。)今後、自家歯牙移植のことを歯牙移植と呼ぶことにします。

歯牙移植は、不要な親知らずの歯を保存不可能で抜歯になった他の場所に移植することがもっとも多いケースです。(症例1)(症例2)


初診時

初診時
症例1 30歳女性
親知らず(印)が斜めに生えてきて、手前の歯(×印)の根が吸収されて腫れてきて来院。
やむを得ず手前の歯を抜歯、そのあとに親知らずを抜歯し、移植しました。
根の治療を終え、冠をかぶせて普通の歯と同じように機能しています。


初診時

再初診時
症例2 30歳女性
他の医院で約1カ月前に×印のところにあった歯を抜歯され、そのままでよいと言われたために心配になって当クリニックへ来院。そのままの位置で手前の歯と親知らずで連結してブリッジにするには無理があったため、後ろの親知らず(印)を抜歯し、移植しました。治療をすすめて、普通の歯と同じように機能しています。
このケースでは、上の歯がすでに挺出(延びている)していたため、上の歯の治療も同時にしています。

時には、親知らず以外の不要な歯を移植出来ることもあります。(症例3)

初診時

再初診時
症例3 38歳女性
×印の歯が保存不可能で、抜歯しました。通常であれば取り外し式の入れ歯かインプラントの選択になりますが、上顎に埋伏している役に立っていない歯(印)を抜歯し、移植しました。根の治療を終え、ブリッジを装着。今ではよく機能して噛めています。
このケースでは、埋伏していた移植歯の歯根膜を傷つけることなく抜歯出来たことと、歯牙の大きさがある程度大きかったことが成功したポイントです。
下の写真が口腔内写真です。

初診時

再初診時

正直なところインプラントを考える前に移植可能な歯があるのならば、たいへん有効な治療法と考えています。
インプラントとの違いは自分の歯を再利用し、なによりも生理的(歯根膜付着)であること、治療期間が比較して短いこと(早ければ移植後1~2カ月で機能)、費用がかなり安くすむことなどがあげられます。
歯根未完成の歯牙(埋伏歯または智歯)を抜歯し、これを保存不適で抜歯したところに移植した場合は、多くの場合歯根膜付着し、さらにすごいことに歯の神経まで再生して歯根も完成します。したがって、この場合は根の治療をする必要がなく、冠をかぶせなくてもそのままで機能します。

(一般歯科担当 井尻博和)