●睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群とは?

 日本では、2003年2月26日の山陽新幹線の事件によって一躍有名になり社会的に大きく取り上げられるようになりました。この事件は山陽新幹線の運転士(33歳)が運転中に寝込んでしまい、最高時速270キロで8分間居眠りをしたまま31キロ走行し、自動列車制御装置(ATC)が作動して岡山駅に本来の停車位置の100m手前で自動停止した事件です。この運転士が睡眠時無呼吸症候群であることがわかり、大騒ぎになりました。

 睡眠時無呼吸症候群とは睡眠中に無呼吸の状態になる病気です。一般的に無呼吸とは10秒以上の呼吸停止と定義され、この無呼吸が1時間に5回以上または7時間の睡眠中に30回以上ある方は睡眠時無呼吸症候群と診断されます。睡眠時無呼吸症候群という名前はSleep Apnea Syndrome (頭文字をとってSAS)の訳語です。

  SASによって引き起こされる異常な眠気は交通事故の頻発、仕事中の居眠りなど社会生活に大きな影響をもたらします。また睡眠中の呼吸停止が引き起こす低酸素状態の影響は、高血圧、心筋梗塞、狭心症、脳卒中、心不全などの原因になることも明らかになっています。さらに重症のSASを放っておくと、死亡率が有意に高くなることも証明されています。
歯科における治療

 SASのなかで最も頻度の高い閉塞性睡眠時無呼吸症候群 (睡眠時の呼吸障害の約80%)の方が対象となります。

 閉塞性睡眠時無呼吸症候群は上気道 (のどちんこのあたり)が閉塞することによっておこりますので、睡眠中にマウスピースを装着することによって下顎を前方に引き出し気道を確保して治療します。 (イラストを参照)

 SASにおけるマウスピースのことを歯科では専門的に、口腔内装置  (オーラル・アプライアンス 略してOA)と呼んでいます。

正常な方の状態

いびきや無呼吸の状態
 上気道を構成している筋肉の緊張が ゆるみ舌は沈下して上気道が狭まり、いびきや無呼吸を引き起こします。

マウスピースを装着した状態
 マウスピースを装着することによって、下顎が引き上げられて舌も前方に移動して上気道が拡大され、空気の通り道ができます。
左をクリックするとアニメーションがご覧いただけます。
当クリニックでの治療のながれ

1回目  口腔内や顎の状態をレントゲン写真を撮ったうえで診断し、問題がなければ、歯型を採ります。(大きな虫歯があったり、歯の欠損が多ければ歯の治療を優先してからになることがあります。)

マウスピースを装着していない通常の噛み合わせ  


 2回目  模型上で製作した上下のマウスピースを口腔内で下顎を前方の位置 (数ミリ)に引き出した状態で固定し、技工室にて仕上げ研磨します。完成しましたら、取り外しの練習をて注意事項等をお伝えします。
その日から睡眠時にマウスピースを装着していただき、ご家族の方などにいびきの状態が改善されたかどうか確認していただきます。

口腔内で固定して完成したマウスピース  
3回目  来院していただいてマウスピースの状態を確認するとともに、ご家族の方などによるいびきの状態をお聞きします。改善されているようでしたら、 マウスピース評価の為のPSG検査を医科において再検査していただくことをお勧めしています。   
口腔内にマウスピースを装着した状態  
治療の費用

 医科において SASと診断されて紹介状と PSG検査結果と保険証を持参していただくと健康保険適応でマウスピースを製作することができます。費用は3割負担の方で歯型採りから製作、装着までおよそ1万円です。

 SASと診断されていない方は実費にて製作します。費用は歯型採りから製作、装着まで31,500円(消費税込み)です。

専門用語の解説
PSG検査 睡眠状態をトータルに評価する終夜睡眠ポリグラフィ検査
AI (Apnea Index) 睡眠1時間あたりの無呼吸の回数
AHI(Apnea Hypopnea Index) 睡眠1時間あたりの無呼吸と低呼吸を合わせた回数
SpO2 血液中の酸素飽和度
無呼吸(Apnea) 10秒以上の呼吸の停止
低呼吸(Hypopnea) 気道が完全に閉じるのではなく、狭小化のために換気量が少なくなった状態
換気の50%の低下に、酸素飽和度(SpO2)の3%以上の低下を伴うもの
シーパップ(CPAP) 夜間眠るときに呼吸器と接続した鼻マスクを装着して、ここから空気を送り込んで、ノドが閉塞しないようにする鼻腔持続陽圧呼吸装置
当クリニックでの症例

60歳 男性  身長 163cm 体重 67Kg  神戸協同病院より紹介で来院

  PSG検査 (2007/10/27)  AI : 35.7  AHI : 53.3  最低 SpO2 : 75%
この結果により、SASと診断され当初シーパップ治療をされておりましたが、装着がたいへんということで歯科的治療を希望し、紹介されて来院されました。

2008/10/10 当クリニックへ初診来院。診断のうえ、マウスピースの型採り。
2008/10/21 マウスピースを口腔内で固定し、技工室にて仕上げ研磨。この日からマウスピースを装着するように指導。
2008/11/15

単身赴任で神戸に在住であるために、関東の自宅にもどられたときに隣の部屋で寝ている奥様にいびきの状態を聞いていただくと、ほとんどしていないとのことでしたので、マウスピースの評価のためのPSG検査をお勧めして受けていただくことになりました。

マウスピース評価のための PSG検査
PSG検査 (2008/12/8)  AI : 0.7   AHI : 14.9  最低 SpO2 : 88%

マウスピースを装着していない時と装着した時を比較しますと
   AI : 35.7→ 0.7   AHI : 53.3→14.9 最低 SpO2 : 75%→88%

横軸
 1目盛り2時間

酸素飽和度 (%)

装着していない時

100%に近いほど効率良く血中に酸素を取り込んでいますので、グラフが上にあるほどいい状態です。
装着している時
90%以下の状態がなくなっています。

いびき

装着していない時

 
装着している時

                                                  資料提供:神戸協同病院

 すべてにおいて大きく改善されていましたので、内科の先生とも相談のうえシーパップ治療ではなく今後マウスピースを装着していただくことになりました。患者さんもたいへん喜ばれて治療を終了しました。

この患者さんの測方写真

 

装着していない時

装着している時

横からの写真で下顎が前方に引き出されているのが判ります。

この患者さんの測方セファロレントゲン写真

 

装着していない時

装着している時

カーソルを持っていくと、上気道の部分が赤色に変わります。マウスピースを装着することによって、拡大されているのがわかります。

Q&A
Q1 誰でもマウスピースは作れますか?
A1 歯の欠損が多い方は作れないことがあります。できれば歯の数が20本以上あることが望ましいです。
歯槽膿漏がかなり進んでいる方や、虫歯の多い方は歯の治療を優先することがあります。
顎関節症の方はその治療を優先することがあります。
18歳未満の方は顎が成長途中であるために、望ましくありません。
Q2 マウスピースを装着したときに気持悪くないですか?
A2 当クリニックのマウスピースは歯のみに被せるコンパクトなものなので、嘔吐反射のきつい(吐き気をもよおしやすい)方でも大丈夫です。(歯ぐきまで被せるタイプのものは気持悪く感じる方があります。)
Q3 どれくらい使用できますか?(マウスピースの耐久性は?)
A3 マウスピースがゆるくならない場合は、正しく装着すればいつまでも使用できます。マウスピースがゆるくなってしまった場合は、寝ている時にはずれてしまって無意識に違う場所で噛んで壊れることがあります。
Q4 マウスピースを装着すればいびきや無呼吸・低呼吸は必ず治りますか?
A4 いびきに関しては、9割以上の方が軽減して効果がみられます。無呼吸・低呼吸に関してはマウスピースの評価のためのPSG検査を受けていただいて初めて効果がわかりますが、必ず治るとは言えません。検査の結果がよくない場合は、医科の先生と相談の上、シーパップ治療や耳鼻咽喉科での手術の適応となることもあります。肥満度の高い方や顎変形症(下顎後退、小顎症)など体格や骨格に問題のある方には効果がでないことがあります。

医科との連携

 当クリニックでは神戸協同病院、神鋼病院、神戸アドベンチスト病院と連携してSASの歯科的治療にとりくんでいます。 2005年8月から現在まで神戸協同病院を中心として、22の医療機関から180名を越えるSASの患者さんが紹介で来院されています。SASの心配のある方はまず PSG検査ができる病院を受診して診断をうけることをお薦めします。
神戸協同病院
睡眠外来
神鋼病院
呼吸器科
神戸アドベンチス病院
睡眠外来

講演会等の活動

兵庫県保険医協会北播支部会員懇談会

2011年11月16日に保険医協会北播支部の会員懇談会(於:小野市加東市医師会館)において、「睡眠時無呼吸症候群(SAS)におけるOA(マウスピース)治療の臨床」という演題で講演させていただきました。

阪大歯学部一補(いちほ)同門会総会 2011年11月5日に大阪大学第一補綴科の同門会の総会(於:ホテルモントレ グラスミア大阪)において、「睡眠時無呼吸症候群におけるOA(口腔内装置)の臨床」という演題で講演させていただきました。100名の参加がありました。
兵庫県保険医協会日常診療経験交流会
医科歯科薬科交流企画
2011年10月30日に保険医協会日常診療経験交流会(於:農業会館)の医科歯科薬科交流企画において、「睡眠時無呼吸症候群(SAS)におけるOA(マウスピース治療の臨床」という演題で講演させていただきました。100名の参加がありました。
月刊保団連2・3月号(発行部数104,000部) 全国保険医団体連合会の月刊誌の2・3月号に「閉塞性睡眠時無呼吸症候群における口腔内装置治療」というタイトルで診療研究が連載されました。月刊保団連は保険医協会に入会している全国の医師・歯科医師に配布される機関誌です。
兵庫県保険医協会北摂・丹波支部
医科・歯科合同研究会
2011年2月26日に保険医協会北摂・丹波支部の医科歯科合同研究会(於:三田市総合福祉保険センター会議室)において、「睡眠時無呼吸症候群と口腔内装置治療ー医科・歯科の連携ー」という演題で講演させていただきました。
兵庫県保険医協会定例研究会 2011年2月20日に保険医協会の医科歯科合同研究会にて、「睡眠時無呼吸症候群とマウスピー(OA)治療ー医科・歯科の連携ー」と題して神戸協同病院院長の上田耕蔵先生と一緒に講演させていただきました。98名の参加がありました。
朝日大学歯学部同窓会広島県支部総会 2010年11月27日の朝日大学歯学部同窓会広島県支部総会(広島県歯科医師会館会議室)において、「睡眠時無呼吸症候群におけるOA(口腔内装置)の臨床」という演題で講演させていただきました。
松本歯科大学同窓会兵庫県支部総会 2010年10月23日の松本歯科大学同窓会兵庫県支部総会(於:兵庫県私学会館)において、「睡眠時無呼吸症候群におけるOA(口腔内装置)の臨床」という演題で講演させていただきました。
ラジオ関西「寺谷一紀のまいど!まいど!」 2010年10月16日放送のラジオ関西「寺谷一紀のまいど!まいど!」の「医療知ろう!」のコーナーに出演しました。
全国保険医団体連合会
保団連医療研究集会
2010年10月10日の保団連医療研究集会(於:東京)において、「閉塞性睡眠時無呼吸症候群における口腔内装置治療のPSG評価」という演題で口演発表してきました。
日本睡眠学会
第35回定期学術集会

2010年7月1日〜2日の日本睡眠学会の第35回定期学術集会(於:名古屋)おいて、「閉塞性睡眠時無呼吸症候群における口腔内装置治療のPSG評価」という演題で、ポスター発表をしてきました.

兵庫県保険医協会神戸支部
第30回総会記念講演
2009年10月17日に兵庫県保険医協会会議室にて医療関係者を対象に「睡眠時無呼吸症候群におけるOA(マウスピース)の効果について」というテーマで講演させていただきました。
2009年3月28日に生田神社会館にて一般市民の方向けに講演させていただきました。ご参加いただいきありがとうございました。
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